シニアの足腰の痛みの実態
高齢化が進む中、シニアの方々の足腰の痛みは深刻な問題になっています。痛みがあると思ったように動けず、生活に支障をきたし、悪化すれば歩行すら困難になる可能性があります。そんな中、シンプルで手軽な「テープケア」が注目を集めています。
2014年テープケア市民講座の風景
テープケアの効果的な取り組み
テープケアは「テープを自分でシュッと貼るだけ」の体の痛みのお手入れ法です。これは「痛みに直接アプローチするのではなく、体の動きの狂いを整え、痛みが自然と消えていく環境づくりを目指す」革新的な手法です。これまでの多くの方から「歩きやすくなった!」と評判が良いです。
ですが、評判が良いだけでは、本当に効果があるのかどうか、判断することはできません。わたしは、テープケアが市民の間で歯みがきのように誰でもできるセルフケアとして普及していくことをイメージしています。そのためには、どうすればいいか?試行錯誤を繰り返していました。
そんな折、厚生労働省のお知らせから「健康科学ビジネスベストセレクションズ」という取り組みがあることを知ったのです。このイベントの目的は、健康的な暮らしを支援する新しい取り組みを産学官医の専門家が評価・紹介するというものです。
そこで、このイベントに応募し、テープケアの効果を認めてもらおうと試みました。
初回の応募は、2015年でした。結果は落選です。
この時提出したレポートは、テープケア講座受講生の写真データがメインでした。これに対し、専門家からは「内容は興味深いがエビデンスが不十分」と指摘されました。
エビデンスとは、その結果の「裏付け」となる客観的事実、科学的な根拠です。
わたしは、本格的なエビデンスを取るには莫大な費用と専門家のサポートが必要ということは、知っていました。その方法は、今のわたしには不可能です。写真の他に良い方法はないかと、東大医学部卒の現役ドクターに相談したところ、「一番わかりやすいのは数字。誰もが知っている『テスト』を利用するのがいい」とアドバイスをいただきました。
ロコモ25テストの採用
そこで、日本整形外科学会が足腰の機能を評価するために作成した「ロコモ25」テストを活用することにしました。このテストにより、日常生活の困難さを数字で表すことができます。
テープケア講座受講生のみなさまにご協力をいただき、およそ1年かけて、データ収集を行ったところ、「受講生の約7割が2週間のケアで体が楽になり、生活しやすくなった」ことが分かりました。
その結果を、2回目のチャレンジとして、2016年「第3回健康科学ビジネスベストセレクションズ」に応募しました。すると、今度は念願の入賞を果たすことができたのです。
国を代表する専門家から高い評価
2017年3月に行われた「健康科学ビジネス創造フォーラム」では、入賞者のプレゼンテーションの機会を得ました。わたしも登壇させていただき、経済産業省、国立研究所の方々、医学博士など、国を代表する権威の専門家からテープケアを高く評価していただきました。
走尾:右から3人目
同期で入賞したのは、西川リビング、凸版印刷株式会社、住友林業株式会社、ダスキン開発研究所、阪急阪神ホールディングス株式会社などなど、名の通った大手企業ばかりです。
そのような応募者の中で、たった一人の名もない市民から始まった、とてもシンプルな取り組みでも、公平に審査され、その意義が認められたことは、わたしにとってこの上ない喜びでした。
テープケアの更なる普及に向けて
この栄誉を胸に、今後もテープケアの普及活動に力を尽くしていきます。
シニアの方々が健やかに過ごせるよう、この、手軽でコストも抑えられるケア方法を広く広めていきたいと思います。
最後に、ご協力いただいた皆様に、心より感謝申し上げます。