【農家さんに将来の希望を持ってほしかった】
埼玉県北本市は、15年間を過ごした、私の第二の故郷です。
ご縁あって、2013年から市の職員さんと共に「すももジャムを特産品にする企画」が始まりました。
すももジャム 物語
「自然の恵の価値は最高級だ!」と、心から感じてくださる方とのご縁を夢見て、「すももジャム」を商品化した。
何十年も昔から地域を支えてきた農産物は、何ものにも変えられない素晴らしい財産。
なんとか後世につなげたい…
行政のサポートで始まった計画が行政の都合で頓挫した。
行政が絡むかどうかは実は関係がなかった。
保存のきかない「完熟のすもも」を準備して待っていてくださった果樹組合長の大畑さんに、ご迷惑はかけられない。
『やるかやらないか、私が決めるだけ』
という事実が浮き彫りになった。
私が責任をとる覚悟をしたら、大畑さんは喜んで後押しをしてくださった。
それから3年掛かりで、商品化が実現した。
すももジャムの希少価値
「すももジャム」をお店で見かけることは、ほとんど、ない。
理由は「果実が傷みやすい」からだ。
「すもも」は果物の中でもとりわけデリケートで、傷みやすく、カビやすい。収穫時期も2週間と圧倒的に短い。そのため、工場で大量にストックしておくことができないのだ。
これでは「砂糖の甘さ」で、せっかくの果物の美味しさが台無しだ。必要以上に砂糖を口にすることにもなる。
わざわざ手をかけて「自爆」しているように思えてならない。
だから私は、
自然の本当の美味しさと儚さを、なんとかみんなに伝えたかった。
だから、「すももの紅色」にこだわった。
それと、「あまずっぱい風味」にこだわった。
贅沢すぎるシャーベット
樹の上で完熟した極上のすももだけを選りすぐり、ゆっくり時間をかけて煮詰めてから、ほんの少しの砂糖だけで仕上げる。砂糖はふつうのジャムの5分の1しか使わない。
だから
ふつうのジャムでは表現できない
濃厚でフレッシュな紅色と風味をもった
とびきりのジャムに仕上がった。
砂糖が少ないことで、冷凍するとシャーベットにもなる。
実は、瓶ごと凍らせてシャーベットにするのが一番おいしい味わい方だ。
手間ひまをかけた品だからこそ、それだけ価格も高くなる。
地元の知り合いからは「あまりに高すぎる。誰も買わないだろう。」と言われ続けた。カフェやパン屋さんに営業して歩いたけれど、販路は見つからなかった。
でも、やめる気はなかった。
だって、私の一番近くにいて支えてくれていた大好きな人たちだけは、誰も「やめとけ」って言わなかったから。むしろ、みんなで「好きなようにやればいいよ。応援するよ。」って、言ってくれた。
「走尾さんのためだから」
と、大畑さんは、本当にいつもとびきり極上のすももだけを選んで、私に託してくださった。だもの、絶対に、東京で売るしかない。
ザ・リッツ・カールトン初代支社長 高野登様とのご縁
販路開拓の一つに思い描いていたホテルがある。
名前は「リッツ・カールトン東京」。
私の大好きなココ・シャネルが愛した、パリのホテル・リッツと深い関係のある、世界的に有名な超高級ホテル。ここで取り扱ってもらえたらいいなと思っていたところ、ご縁あって「リッツ・カールトン初代日本支社長の高野登さま」とお会いすることが出来た。
( 2015年 2月 )
「すももジャムをリッツ・カールトンホテルで取り扱っていただくためにはどうすればいいでしょうか?」とお尋ねしたら、可能性のあるアプローチを教えてくださった。
契約には至らなかったけれど、リッツ・カールトン東京のレストランのエグゼクティブシェフさま&スーシェフさまにテイスティングをしていただくことができ「濃厚でとても美味しい」とご評価をいただいた。
それ以来ずっと、高野様からご縁をいただいている。
( 2017年 2月 )
高野様からは、様々な教えをいただくことができて、今では私の大切なメンターのお一人。本当に奇跡のようなご縁を頂戴した。
これも、「すももジャム」のお陰様(^^)支えてくれていた方々は商品化を心から喜んでくださった。そのことが、本当にびっくりしたし嬉しかった。
購入してくださる方もぽつりぽつりと見つかってきている。お陰様で、今年の分は取り置き含めて完売した。
おもしろいと思ったのは、視点を変えたときの評価。
ジャムだと「高いね」 なのに
シャーベットだと「うわ~贅沢だね」 となる。
いっそ、「室温流通できるシャーベット」ってキャッチフレーズで売ろうかと思うくらい(笑)
夢が叶った
こんなことができるのも、「樹の上で完熟した最高に美味しいすもも」を、「普通のジャムの倍量」使って時間をかけて丁寧に作った「本物」だからこその結果。
応援してくれた皆様のおかげさまで、農家さんにこれからの希望や夢を持っていただくことができた。「来年は、もっとたくさんのすももと、新たにブルーベリーも使って、北本フルーツセレクションブランドのジャムをいっぱい作ろう!」と農家さんと企んでいる。
(2017年 6月 果樹農家 大畑 張根さま と 私)
たかがジャムを商品化しただけで、こんなにたくさんの人に喜んでもらえるなんて、これっぽっちも思っていなかった。
【70才になってからワクワク楽しい来年の仕事の予定が一年前にコンスタントに入る】ってめっちゃ素敵♪
ゼロを一にする仕事っておもしろ~い♪
応援してくださってありがとうございます。これからも後押しをよろしくお願い致します。
やりたいことをやりたいように一生懸命やったら、応援してもらえて夢が叶った一つの記録(笑)
開発から5年めの軌跡
季節限定のすももジャム屋をはじめて3年目の2020年。
でこぼこだった道がようやく歩きやすくなってきました。
( 2018年 6月 )